飲食店とAI (人工知能)について 〜集客とコスト削減〜③

飲食店とAI (人工知能)について 〜集客とコスト削減〜③

目次

飲食店とAI(人工知能)〜AI市場規模〜

まずは、改めて、AIとは?だが、さまざまな知覚、思考、推論、記憶など、人間の 知的能力をコンピュータ等によって代替する技術のことで、具体的にはそれらに搭載される高度なソフトウェアを指すことが多い。AIの主な技術には、音声認識(人間の話し言葉を文字に変換する技術)や、画像認識(画像を認識して人物や物体など対象物を特定する技術)、自然言語処理(音声操作、音声検索、機械翻訳、セマンティック検索など)、マシン・ビジョン(ロボットや各種マシンに工学的な視力を持たせる技術)、機械学習(コンピュータや各種マシンがビッグデータなどを解析して学習する技術)、確率的推論(機械学習などの成果を使って物事の相関性や因果関係を確率的に推論すること)などが挙げられる。
米調査会社トラクティカ(Tractica)の 2016 年 8 月 25 日付発表によれば、2016年時点の世界のAI市場の利益は6 億 4,365 万ドルで、9年後の2025年には368億 1,816万ドル(約 57倍)にまで成長しているという。
さらに、分野別にみると、例えばロボティクス分野と組み合わせた利用の場合、アドバイザーロボット、自動運転車、人工知能分析が、2030年までの市場規模で上位になると見られている。
(引用:2017年3月 JETRO調査)

飲食店とAI(人工知能)〜海外事例〜

北米、アジアを中心としたAI市場の中でレストランカテゴリでの事例はどのようになっているのかリサーチしてみた。

スターバックスは、スマートフォンから注文することで、店舗ですぐに受け取れるサービスを米国で開始した。この注文の応対には、iPhoneの場合はSiri、Android端末の場合はAmazonのAlexaが活用されている。
KFCは、上海で中国のサーチエンジン大手Baiduとパートナーシップを結び、AIを活用したロボットが、全ての接客業務をおこなう店舗を開いた。この店舗では、ロボットが注文と会計を行うため、店舗内に人間の店員は配置されていない。
(引用:2017年3月 JETRO調査)

他のAI活用事例はあるのだろうか?
サンフランシスコに本拠を置くEatsaが経営するレストランでは、「iPad」で注文を取り、オートメーションの機械で食事が提供される。
この技術をシカゴ中心に展開しているファストフードチェーン店WowBaoへ展開。既にアプリや、店舗にあるキオスク端末から中華まんを注文できるシステムを使っているが、Eatsaの技術が導入されたことにより、LED照明で照らされ、自分の名前が表示された戸棚のようなボックスから食事を受け取れるようになる。ボックスがずらりと並ぶ中、自分のボックスの前面には、注文の調理時間が表示され、料理を受け取れる時刻が分かるようになる。

何かかなり飲食店としては味気ない気がするが、近い将来、多くのファストフード店はこのような形態になっていくのだろう。
カリフォルニア州のスタートアップ企業Miso Roboticsは、「Flippy」というキッチンアシスタントロボットを開発しており、このロボットは2018年初頭より、レストランCaliBurgerでバーガーを焼く作業を担当する見通しだ。
Flippyは、単にバーガーを上手にひっくり返すだけではない。コンピュータビジョンを使って、パティの焼け具合を追跡し、完璧なミディアムレアに仕上げる。このロボットはセンサやカメラ、ロボットアームなど、簡単に手に入る部品で作られている。そのほかの作業を担うのは、AIだ。
(引用:2017年11月cnetjapan)

海外のAI活用事例を多数リサーチしてみたが、やはり大手ファストフード店中心にスマホを活用したオーダーリングやセンサカメラを活用し、調理するロボットなどが主流だとわかった。
外食業界ではファストフード店を中心に今後、AIの活用が広がっていくのだろう。
では、日本国内ではどのような事例があり、また少子高齢化が進む中、どのようにAIを活用すれば、業務効率化と売上UPを計ることができるのかを推測できればと思う。

飲食店とAI(人工知能)〜国内動向と活用〜

まずは、AI(センサーやカメラ)を使って集客を効率的に達成しようという試みだが、バカン社が手掛けるプロジェクトがある。同社は相鉄アーバンクリエイツ、高島屋と組み、複数の飲食店の空き状況が一覧できるデジタルサイネージをジョイナスや横浜高島屋内に設置。顧客の満足度を計る実証実験をはじめており、今後、段階的に実用化していくとしている。
こちらの事例は、商業施設という箱での取り組みだが、広い商業施設内のレストランやカフェに足を運ばないと混雑状況がわからないという課題がある中で、顧客満足度を向上させるサービスである。

センサーやカメラを使用したAI活用は小売カテゴリで活用されつつある。
特定のセンサーを使い、入店数、入店率、コンバージョン率、棚前通過人数、立ち止まり人数来店客単価、来店客男女比、年齢層、来店頻度などのKPIで可視化、分析する。
そのデータに基づき店舗の課題を自動抽出し、改善施策の自動提言を行う。まさにMA(マーケティングオートメーション)の世界である。
このようなAIサービスは飲食店にも当てはまるのだろうか?

少子高齢化の中、新規集客ではなく、顧客のリテンションを高め、且つ店内の生産性向上を前提に客単価を上げ、売上UPとコスト削減を計るためには、どのようにしたら良いのか?
これを考えるにあたり、2015年頃に日本で展開を開始したIBM Watsonの紹介動画を思い出す。初めて見た時、このような世界が来るのかと単純にワクワクしたことを覚えている。
内容は、飲食店内のシーンで、ウェイトレスはGoogleGlassのようなものを付けており
(ドラゴンボールのスカウターのようなもの)、お客が来店すると、スカウターはそのお客を把握し、スカウター内には、そのお客の情報が自動で表示される。内容としては、何度目の来店なのか?前回何を食べたのか?好きな味や食べられないものは何か?など顧客を把握できるデータを即時に可視化でき、接客に応用できる内容だった。まさに近未来を想像できた。
店内のAI活用に可能性を感じる1シーンで、いろいろとインスピレーションを与えられた動画である。

AI搭載のカメラ、センサーの進化により、店内のお客の嗜好性把握はもちろんのこと、お客の表情による喜怒哀楽の判断によるCSの向上が可能となってくるだろうし、店内に取り付けるカメラ、センサーの小型化もさることながら、店員が身につけるセンサー、カメラはいずれメガネやコンタクトレンズみたいなものになっていくのだろう。
最終的にAIが「1番テーブルのドリンクオーダータイミングです!5番テーブルの女性客は本日誕生日です!何かサプライズを。」などと人間がAIに指示される時代に入ってくるだろうと。
この結果、リテンションを高めつつ、店内の生産性向上を図れ、客単価UPが望めるようになり、お店とお客はWinWinな関係を構築できる。

飲食店とAI(人工知能)〜まとめ〜

外食、お酒が好きなわたしとしては、ロボットが料理を作り、ロボットが接客をする全てオートマチックなお店より、AIが最適な情報を人に与え、指示を出す飲食店の方が、血の通った行きたいお店であると思うとともに、近未来もそのようなお店が多く残ることを祈るばかりである。とは言いつつ、日本は深刻な少子高齢化社会に突入しており、世界に類をみないケースとなっている。このような中、日本を衰退化させないための一助となるマーケットが昨今騒がれているインバウンドマーケットであることは間違いない。次回は、インバウンドマーケットに焦点を当て、いろいろな角度で見ていきたいと思っている。